2009年08月13日

ヴェルゼル、鬼になる・後編〜Human Hearts.

◆地獄の入り口・B1(地下1階)

錆びやら刃こぼれやらでボロボロのロングソードを構え、綻びが目立つ革鎧を身に着けたスケルトンが8体。
空洞のハズのその目の奥に、不気味な赤い光が点っている。
しかし、にやっと笑っているように見えるのは、俺の錯覚だと思いたい。
皆、身構えながらこっちの隙を窺い、きしきしにじり寄って来る。

『ふつーなら無造作に剣振り回して来そうなもんだが、さすがにレベル高ぇな……。』

こっちは、前衛が俺とエリーゼ。
エリーゼは、俺の右側でホネらを睨み、ショートソードとスモールシールドを構えている。
顔には大粒の汗が浮き流れ、いつも綺麗にメンテしている盾も革鎧も傷だらけ。
そして乱れ気味の呼吸を無理に鎮めようとしながら、
「どっからでも掛かって来な……!」
と静かに凄んで見せてはいるものの、少なからず虚勢を張っているのは明らかだ。

そして後衛がクリスとシルビア。
俺がクリスの、エリーゼがシルビアの盾となる陣形。
おかげで二人ともさすがに、俺達前衛よりは綺麗な格好だが、疲労の色は俺達より濃厚だ。

ちなみに今日の二人の服装は、クリスが黒、シルビアが白を基調としたゴシックワンピで、手には、クリスは黒の手袋に、黒のステッキをモチーフにした杖。
シルビアは白の手袋で、楽譜を数枚束ねた手作りの本を開いて持っている。
靴は、本当は二人ともハイヒールを御所望だったが、俺が全力をもって却下。
なんせダンジョンだからな。
実用重視のロングブーツで妥協させた。

さらにクリスは、小さなシルクハットのアクセを髪飾りに着けて来た。
こう、ナナメに着けたぐらいにして。
ふん。オシャレさんめ。

出発前はそれくらい余裕だったのだが。
いつもはポーカーフェイスの二人が、今回は普段以上に顔面蒼白。
少しばかり呼吸を乱して、持ち前の精神力で、やっと立っているって感じだ。


決して駆け出しではない俺達・仲良しパーティをここまで苦しめているこの場所は、ディファント王国の外れ、『初心者立入禁止!』の立て札も無残に倒され放置されている、通称「地獄の入り口」。そのB1だ。
目的は、このホネらの後ろにある頑丈そうな木の扉。
その向こうにある。

その理由は……


続きを読む
ニックネーム 眞 at 22:00 | Comment(4) | ストーリー